カテゴリー
ガイダンス 外国為替FX 欧州経済

中央大学経済学部教授・中條誠一氏の研究会報告、12/7(水)午後4時20分、長崎県立大学シーボルト校(長与町)

中央大学経済学部教授・中條誠一氏の研究会報告

日時:2016年12月7日(水)16:20~17:50

会場:長崎県立大学シーボルト校中央棟M101教室

報告テーマ:金融・通貨から見た世界経済:人民元の国際化を中心に

略歴

中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。1993年、商学博士(大阪市立大学)。1993年、日商岩井株式会社調査室員、その後大阪市立大学商学部助教授・教授を経て、1996年より中央大学経済学部教授

主な研究領域は、国際金融論、外国為替論、アジア経済。最近は、アジア通貨システムの改革、中国の人民元の国際化を中心に研究されておられます。

『貿易企業の為替リスク管理』(東洋経済新報社)、『ゼミナール為替リスク管理』(有斐閣)、『ゼミナール為替リスク管理・新版』(有斐閣)、『アジアの通貨・金融協力と通貨統合』(文真堂)、『 現代の国際金融を学ぶ』(勁草書房)、『人民元は覇権を握るか – アジア共通通貨の実現性』(中公新書)、『 新版・現代の国際金融を学ぶ』 (勁草書房)など著書多数。

 

問い合わせ先

カテゴリー
ガイダンス グローバル人材 外国為替FX 日本経済関連 欧州経済 米国経済関連 金融経済関連

【コメント】外国為替およびインバウンド観光への影響(2016年5月25日)

■質問
6月末の小原先生の予想は?
■回答
1980年1月以降の月間分析では、前月比変動幅は3円程度、過去5年間で2円程度です。現在値から±3円以内のレンジで考えています。円高基調と考えますが、大きく変動する要因も見当たらず、109円90銭を予想とします。
日本銀行の金融緩和に対する日本への円安批判のほか、トランプが共和党候補となるアメリカ大統領選挙、英国のEU離脱を問う国民投票など、相対的に円が買われる要因がありますが、かなり市場には織り込まれているという前提です。消費税引き上げの延期が、日本経済の回復が遅れているため、つまり追加の金融緩和政策があるとの見方が強まれば、円安要因になります。追加の金融政策が伴わないと、円安要因としての効果は限られます。

■質問
円高になるから業績が悪化するのか、業績が悪化するから円高になるのか?
■回答
何が原因で、何が結果なのかを考えることは大切です。回答は前者です。外国為替はドル・円であれば、日米の金利差など日米のマクロ経済・金融政策の動向のほか、欧州・新興国も含めた世界的な様々な要因で価格が形成されます。円高により、日本から輸出する製品の価格が上昇、さらに海外売上高・利益を圧縮します。他方、輸出企業の業績悪化が日本経済全体に影響を及ぼす場合、日本銀行の追加金融緩和期待が高まると、円安要因になります。

■質問
外国人旅行者がなぜ、日本で大量に買い物をしているのか?
■回答
1.中国をはじめとするアジア諸国の所得上昇
2.日本の経済政策としての観光ビザの緩和
3.円安(リーマン・ショック後の70円台との比較で)による外貨換算価格の低下
4.消費税8%の免税措置(外国人や日本人への贈答や転売も含まれうる)
※外国人観光客の両替は、円高要因です。

カテゴリー
中国経済関連 新興国経済 日本経済関連 欧州経済 米国経済関連

人口の世界シェアの推移:日本の最大は1710年の4.9%、1870年に日米逆転

トマ・ピケティやアンガス・マディソンのように、長期の統計推計が、今どきの経済史家の重要な研究分野になっている。教科書的な歴史≒政治史へのチャレンジとも言えるのかもしれない。

Max Roserの長期の歴史人口推計によると、「日本」において先祖が経験していないレベルの「人口小国」に向かっていることがわかる。

過去200年で世界シェアが高かったのは1950年の3.3%である。戦後のベビーブームが寄与している。他方、日本がもっとも世界シェアを高めたのが徳川6代将軍時代の1710年である。中世の1400年でも現在の日本より高い。これが2100年になると、0.7%になる。

ちなみに日米の逆転は1870年に起きている。黒船到来から17年後にあたる。2100年を見れば、中国ではなくインドがかつてない「人口大国」となる。
Max Roserは1400年以降、1700年まで100年単位、それ以降は10年ごとで、それぞれ推計している。ただし、歴史統計の元データはKees Klein Goldewijkから入手としている。

表 人口の世界シェア
年 日本 米国 中国 インド
1400 2.5 0.5 19.3 26.3
1710 4.9 0.2 18.1 27.6
1770 3.5 0.5 27.4 27.6
1870 2.6 2.9 27.2 23.3
1950 3.3 6.2 21.7 19.0
2010 1.8 4.6 19.8 23.8
2100 0.7 3.9 9.0 31.1
出所:歴史データはHistory Database of the Global Environment (HYDE), 予測値はUN(2008 revision).

worldpopulation

カテゴリー
欧州経済 金融経済関連

「ユーロを見る目」2016年、欧州懸念の再熱で、円高になりやすい

欧州など世界経済減速懸念や、銀行の健全性に対する不安を背景に、安全資産とされる円買いの動きが加速したとコメントされている。2016年6月までには、英国でEU離脱を問う国民投票も予定されており、欧州崩壊論や欧州危機論が出やすい。

ユーロ安はドイツの輸出に有利である。

いまドイツがユーロにとどまる「説明」をそう考えても間違いではない。たとえ政治家や有識者の世論向けのコメントも、WEBや報道の編集を経由して、最終的には、各個人で取捨選択され、世論が形成される。

ドイツは通貨・金融政策ではユーロ圏のため、ドイツ経済に比べて、通貨安にも通貨高にもかい離してきた。いまはドイツにとって通貨安のメリットを享受できる。東欧という新興地域は労働力と市場をドイツに提供している。

一人当たり名目GDPによると、ドイツとギリシャの経済格差は2000年で2.0倍、2009年で1.4倍まで縮小し、現在では2.2倍である。ドイツは積極的に支援してもよい。ただし、は東京都と東北や九州・沖縄の各との倍率と同程度である(県民経済計算)。ユーロ圏全体ではドイツとラトビアの格差が最大で7.4倍(2014年)。こちらは中国の省・直轄都市の格差とほぼ同じである。

法律・制度は継続するとしても、構想段階、法案段階、実施段階、10年後、20年ごと、理由づけは変わるもの。統一国家の日本なら40年前の構想で新幹線を建設できるのかもしれないが、欧州なら反論も多様で論理的でしょう(例えば、報告書のページ数が500ページ以上とか)。

幾多の戦争を経験した欧州の先達は政治統合を構想したのではないのか。他方、EUやユーロ圏で育った世代が次の欧州をどう次の制度修正を構想するのか。

通貨・金融政策の難易度は高い。貿易自由化、軍事同盟(安全保障)、人の移動の自由化を経て、通貨・金融政策の統合は、財政統合、最終的には政治統合に向けての工程表の最終段階に入れられる。

欧州統合は新しい政治なのか、ユートピアなのか。

経済的理由はむしろ支持を集める理由や世論形成の道具(方便)と考えるほうが大局を見誤らないかもしれない。

ただし、ドイツが大胆な財政支援に踏み出せないのであれば、早急にユーロ圏の離脱を容易にすべき。民主主義ゆえに、合意形成や手続きに時間はかかるが、副次的効果としては、それだけ、世界が欧州を注目する。