2005年反日デモは国連常任理事国入りが主な要因だった 長崎県立大学国際情報学部 小原篤次

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2012年の反日デモは、中国側にとっては、尖閣諸島の領土問題である。一方、2005年の反日デモは、日本の国連常任理事国入り表明が主な要因だった。中国は国連常任理事国だから、日本によって国際政治上の既得権益を乱すと映る。

領土問題、国連常任理事国と、要因は極めて政治的なものである。
よって政治的なデモで有る以上、自然発生的な大衆の示威行動とは考えにくい。政府・党が仕掛けたものや、政府・党が容認したものの可能性がぬぐえない。

ただ中国共産党の意向と、大衆行動の両方から成り立っているものと考えておくのが妥当だろう。ただ毛沢東の肖像画が掲げられているように、デモ参加者の主張は反日、尖閣国有化だけではない。格差社会、つまり共産党幹部、企業家や、上海や北京など大都市住民など、13億人の一部の人間が先に豊かになり、恩恵を被りきれていないことへの不満も内包されている。

領土問題は、他国が常任理事国入りするかどうかより、優先度が高いアジェンダと肝に免じるべきである。東シナ海ガス田問題が実証するように、周辺海域の共同開発のような解決方法も容易ではない。

国有化の時期が最悪だ。中国は共産党大会前で権力の移行期にある。石原さんの暴走を抑えるため、政府が尖閣を買い上げたことで、パンドラの箱を開けてしまった。民主党が、普天間基地の海兵隊を県外移設としたのもパンドラの箱を開けた行為に見えた。政府の決定後、東京都が買うより政府が買う方が、ベターとする苦しい社説が多かった。
実は、共同管理のような何らかの落としどころ(交渉過程のため今は公表されていない)があって、政府が買い上げたのなら、要らぬ心配になるのだが。極めて残念なことは、日本から中国、そして米国へ、事前に十分な説明をしたという報道が出てこないことである。

理由や経緯は本来、重要だが、日本政府の買い上げで、中国の「反日世論」に火がついた。無秩序な行動は香港資本のドラッグストア屈臣氏(WATSONS)、カルフールやマクドナルド、ロレックスなども襲撃されたりしている。日系デパートや大型スーパー、日系コンビニの商品は日系だけではない。火がついている以上、しばらく、中国に滞在する人は普段以上に、自己防衛、自己管理を迫られる。外交の様々なチャンネルで粘り強く、コミュニケーションを続けていくしかない。

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