増田寛也編著(2014)『地方消滅』中央公論新社

本書は、新たに人口推計を行ったものではない。代表的な人口推計である、国立社会保障・人口問題研究所の2010年から15年までの間の人口推計に基づいて、2040年の段階で、出産可能年齢「20~39歳の女性人口」の減少の可能性を大まかに推計し、「消滅」という刺激的な表現を用いながら、896都市の具体名を示し、社会に対して、少子化対策の重要性を訴えている。地方自治体職員、地方政治家が、買ってしまう一冊だろう。

人口置換水準は2・07

政治も行政も、人が増え、町が栄えていくビジョンは打ち出しやすいが、人が減り、街が縮小していくことはもはや不可能であり、むしろ、すべての市区町村が人口を減らすと考えたほうがよい。そのなかで、医療や交通、教育といった生活に必要なサービスをどういじしていくか、道路や橋梁、公民館といったインフラをどう補修していくか、地域の産業や雇用をどう開発していくか、など多くの課題に取り組む必要がある。4ページ

9つの誤解
1.本格的な人口減少は、50年、100年先の遠い将来の話ではないか?
2.人口減少は、日本の人口過密状態を解消するので、むしろのぞましいのではないか?
3.人口減少は地方の問題であり、東京は大丈夫ではないか?
4.日本全体の人口がすくなくなるのだから、東京に人口を集中し、生産性を向上させたほうがよいのではないか?
5.近年、日本の出生率は改善しているので、このままいけば自然と人口減少は止まるのではないか?
6.少子化対策はもはや手遅れであり、手の打ちようがないのではないか?
出生率改善が5年遅れるごとに将来の安定人口が300万人ずつ減少する。
7.出生率は、政策では作用されないのではないか?
8.「子育て支援」が十分な地域でも、出生率は向上していないのではないか?
子育て環境の問題だけではなく、晩婚化や若年層の所得問題なども大きく影響している。
9.海外からの移民を受け入れれば、人口問題は解決できるのではないか?
日本を多民族国家に転換するほどの大胆な受け入れをしなければ、出張率の低下はカバーできず現実的な政策ではない。
5-8ページ。

増田らの推計は、国立社会保障・人口問題研究所の推計(日本の将来推計人口(平成24年1月)の中位推計)における2010年から15年までの間の人口移動の状況がおおむねそのままの水準(概ね毎年6~8万人程度が大都市圏に流入)で続くという想定で算出したものである。2010年から40年までの間に「20~39歳の女性人口」が5割以下に減少する市区町村数は、現在の推計に比べ大幅に増加し、896自治体、全体の49.8%にものぼる結果となった。本書では、896の自治体を「消滅可能性都市」とした。29ページ。

2040年に人口1万人未満(推計)、523自治体、「消滅可能性が高い」都市
208ページ。

東京23区のうち、豊島区-50.8
大阪市のうち、西成区-55.3、大正区-54.3、住之江区-53.6、中央区-53.6

若年女性人口増加率上位20市町村
若年女性人口変化率(2010→2040)
1.石川県川北町、15.8、産業誘致型
2.秋田県大潟村、15.2、産業開発型
3.横浜市都筑区、13.4、ベットタウン型
4.福岡県粕屋町、11.3、ベットタウン型
5.宮城県富谷町、8.3、べットタウン型
6.富山県舟橋村、7.5、ベットタウン型
7.鳥取県日吉津村、6.8、産業誘致型
8.福岡県志免町、4.8、ベットタウン型
9.大阪府田尻町、3.8、公共財主導型
10.京都府木津川市、3.7、公共財主導型
11.群馬県吉岡町、1.9、ベットタウン型
12.愛知県日進市、1.8、学園都市型
13.埼玉県吉川市、1.7、ベットタウン型
14.愛知県幸田町、1.3、産業誘致型
15.埼玉県滑川町、0.8、ベットタウン型
16.愛知県みよし市、-0.4、産業誘致型
17.広島市安佐南区、-1.8、ベットタウン型
18.奈良県香芝市、-1.8、ベットタウン型
19.愛知県高浜市、-2.4、産業誘致型
20.佐賀県鳥栖市、-2.4、産業誘致型

コンパクトシティ型
高松市丸亀町、宮城県女川町
産業開発型
秋田県大潟村(農業)、福井県鯖江市(中小製造業)、北海道ニセコ町(観光)、岡山県真庭市(林業)
126-139ページ。

道州制や市町村合併など統治機構改革について、反対である。問題は「時間軸」である。統治機構の改革には、これだけで国民的な題記論が必要であり、多くの時間と政治的コストが費やされるだろう。その間も少子化は止まらず、人口減少は進行していく。200-201ページ。

以上、備忘録。